FM TIPS
「アウトソーシング」とは(その2):FM分野への適用
前回のコラムで「アウトソーシング」の定義を、慶應大学の花田光世教授が提唱されているモデルを使って紹介させていただきました。
この「アウトソーシング」、今では、広範な分野で採用されています。
FMの分野では、どうでしょうか。
身近なところでは、「清掃業務」があります。私よりビジネスキャリアが長い方々の中には、自社のオフィスを自ら掃除をされていた経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。当社も、以前のビジネスモデル(ビルメンテナンス、マンション管理)により、数年前まで、社員が自ら使っているオフィスを毎日清掃するスタイルを維持していました。
「警備業務」はどうでしょう。日本における「警備業」の先駆的企業が1960年代に起業し、警備業務をアウトソーシングすることが一般に広まるまで、企業は「守衛さん」を自社で雇用していました。
その一方、プロジェクトベースで実施される業務で、かつ、高度な専門性を要求される業務は、過去から「アウトソーシング」することが一般化していました。建物建設における設計業務は、その典型と言えます。
そのような中でも、自社内に建築の設計業務のリソースを保有し、内製化していた企業がありました。日本全国に電話局を新規に建設する必要があった時期の日本電信電話公社は、その好例です。電話局というある種の特殊性をもった建物を、短期間に日本全国に建設するためにもっとも効率的な手法として、大量にその分野の専門家である「建築士」を社内に抱え、一時は日本最大の「建築設計事務所」を内在化させていたのです。
このようにFM分野における「アウトソーシング」の経緯を見てくると、効率性を重視してリソースのあり方を見直し、その結果として業務を「アウトソーシング」してきたことがわかります。
社会全体が高度化し、より複雑化した近年では、FMそのものに、高い専門性を求められるようになってきました。そのため、インハウスのリソースだけでは対応が困難になる局面が、以前と比較して多く発生するようになっています。さらには、自社事例のみしか体感できないインハウスのリソースが、より高度な専門性を獲得する可能性の限界を、多くの人たちが認識し始めてきました。
そのような状況を背景に、より広範囲なFM業務を、それも一括で「アウトソーシング」する事例が増えてきているのではないでしょうか。
そのような傾向が強まっていく中、私たちのような「アウトソーサー」は、受託業務範囲の拡大とともに、さらなる専門性の向上に努めていかなければ、市場における価値を保つことができなくなってきていることもまた事実と言えます。
【2012年1月公開】
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