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地震による漏水事故は保険の対象か?(高裁判決)

早いもので、東日本大震災から1年以上が経ちました。原発問題を含め、復興にはまだまだ時間がかかると感じている方も多いかもしれません。また、万一に備え、新たに地震保険に加入した方が増えたとの報道もあります。通常の保険では、地震に起因する損害は、免責の対象となるとされています。(いわゆる「地震免責条項」)

 

今回は、2012年3月19日の東京高裁の判決に注目しました。東日本大震災で震度5強を記録したマンションで起きた漏水事故の控訴審判決です。今回の事故は地震免責条項にあたるかどうかの争いです。

 

事故が起きたのは、築29年のマンションで、住戸内に設置されている電気温水器の配管に亀裂が生じ、階下に漏水が発生しました。そこで被害住戸の区分所有者が保険会社と加害住戸の区分所有者に対し、復旧工事等の支払いを求め、東京地裁に訴訟を起こしました。

 

第一審の東京地裁の判決では、震度5強程度の揺れは「地震」に当たらないと結論付け、保険会社と加害住戸の区分所有者に支払いを命じました。

 

これに対する控訴審判決が東京高裁で出ました。結果から言えば、一審の判決を取り消し、請求を棄却する判決を言い渡しました。

 

全く逆の判決が出ましたが、これは、地震免責条項の定義の違いによるものだと考えられます。第一審では、判断基準を「事故発生地点での個別具体的な揺れの程度や建物の耐震性等を考慮」しなければならないとし、その結果、今回の事故は地震に当たらないため、地震免責条項の対象とはならず、通常の保険対象となるとしました。

 

これに対し、控訴審判決では、第一審の判断基準では「震源地に近く被害が大きい地域では、地震免責条項の対象になり、保険金の支払いを受けられないのに対し、震源地から遠く被害が小さい地域では地震免責条項の対象とならず、保険金の支払いを受けられることになり得る」とし、控訴審では、「地震と相当の因果関係がある損害はすべて地震免責条項の対象になる」と結論づけました。

 

この「震源地に近く…なり得る」という見解は、震源地近くの被害が大きい地域は保険金が支払われず、震源地から遠く被害が小さい地域は保険金が支払われるのは、不平等であるとの考え方です。共感する方は、多いかもしれません。

 

今回の事故は、最終的に上告するかどうかまだわかりませんが、地震という未曾有の災害に対し、私たちもいつ加害者、被害者になってもおかしくありません。今回の事故のように同じマンションの区分所有者同士が争うことがないよう、日ごろから充分な対策を講じておく必要があるのではないでしょうか。 (P.Sちか)
[2012年5月公開]

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