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バリアフリーとユニバーサルデザイン

ロンドンでは、オリンピックに続き、パラリンピックが開催されました。オリンピックとは一味違う感動を覚えた方も多いのではないでしょうか。また、障がいのある人々のことを考える良い機会となったと感じている方も少なくないでしょう。

 

障がいのある人々や高齢者について考えるとき、「バリアフリー」というキーワードが頭に浮かぶかもしれません。この「バリアフリー(※1)」という言葉は、40年ほど前から使われるようになったもので、日本では主に、「高齢者や障がいのある人々にとって障壁となるものを取り除くこと」という意味で用いられています。

 

そしてその基盤となるコンセプトが、「ノーマライゼーション(※2)」です。これは1950年代にデンマークで提唱されたもので、障がいのある人々と健常者とが分け隔てなく社会生活を共にするのが正常であるという理念のもと、そうした社会を実現するための取り組みを指しています。

 

日本においては、1994年に「ハートビル法(※3)」、2000年に「交通バリアフリー法(※3)」、2006年にはそれら2つが統合・拡充された「バリアフリー新法(※3)」が施行され、法整備の面からもバリアフリーが推進されてきました。法の詳細については割愛しますが、特定の施設において、ある一定の基準を満たすことを、義務または努力目標としています。すぐに思いつくバリアフリーデザインの具体例としては、出入口の段差をなくす、車椅子でも使用できるトイレ、超低床のバスなどが挙げられます。

 

この「バリアフリー」の考え方を更に一歩押し上げたものに、「ユニバーサルデザイン(※4)」という考え方があります。

 

「バリアフリー(BF)」が、障がいのある人々や高齢者を特に念頭に置いてデザインされたものであるのに対して、「ユニバーサルデザイン(UD)」は、「できるだけ多くの人が利用可能であるようなデザインにすること」です。BFが対処療法的になりやすいのに対して、UDはより総合的で提案的であるとも言えるかもしれません。この概念の適用分野は建築・インテリアから工業製品に至るまで多岐に渡ります。「施設」に関連した身近な例として、「車椅子利用者に限定せず、様々な人が使えるようにした多目的トイレ」が挙げられます。

 

このように、「大規模な何かを設置する」ことに注目しがちですが、実はUDには以下のようなものもあります。

・非常時の警報は、視覚・聴覚の両方に訴えるものとする
・各種表示を、多言語表示にする、ピクトグラム(絵文字)にする
・受付や会議室などを、出入口、エレベーターなどの近くに配置し、移動ルートを明確にする

 

UDの導入は、施設の利便性・安全性・効率性を高め、利用者の満足度を向上させるものです。これからの時代には、公共性の高い施設に限らず、利用者が限定されるワークプレイスやマンションなどにおいても、UDを取り入れた設計が不可欠になると思われます。施設の新設、または既存施設の改修の際には、積極的にUDを取り入れてはいかがでしょうか。 (らぼたもち)

 

※1英語圏では、「アクセシビリティ(accessibility)」という語がこの意で使われる。
※2デンマークのバンク=ミケルセンにより初めて提唱された。
※3全て通称。正式名称はそれぞれ、「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」、「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」、および「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」。
※4ノースカロライナ州立大学のロナルド・メイスが1985年に公式に提唱した。
[2012年9月公開]

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