FM TOPICS
抗菌素材としての銅製品
清掃業務の目的には、「美観」の維持と、「衛生」の確保の両面があることについては、以前の「FM Topics」でお話しました。(※1) 「衛生」を確保するためには、「見えない汚れ」を取り除くこと、すなわち、除菌・消毒などの作業が関係してきます。これらによって、菌やウイルスによる感染症を予防するのです。病原性大腸菌O-157やノロウイルスの流行、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)による院内感染などが、近年問題となることが多くなっている中で、この「衛生」の確保という部分は、ますます重要度を増していると言えるかもしれません。
一般に、菌やウイルスの感染拡大を防止するためには、ドアノブや電気のスイッチプレートなど、人の手が触れる部分の除菌や消毒が必要になってきます。しかしこれらの作業は、どれだけの頻度で実施すれば安心だという絶対的な基準があるものではなく、その作業の仕様を設定するうえでは頭を悩ませることもあります。そのような中で近年、異なるアプローチに注目が集まっています。それは、抗菌性のある素材を使用することによって、感染経路を遮断するというものです。その素材とは、銅です。
実は、銅に抗菌作用があることについては、古くはギリシャ時代より知られてきました。これは、水などに溶け出したごくわずかな量の銅イオンが細菌類の働きを抑えるためで、1893年、スイスの植物学者ネーゲリーにより発見され、「微量金属作用」(※2)と呼ばれています。「銅壺の水は腐らない」、「花瓶に10円玉を入れると花が長持ちする」などの言い伝えに、科学的な根拠が得られた訳です。
医療施設内の院内感染に対する対策として、世界各地で改めて銅に関する研究が行われ、銅や銅合金の表面では、院内感染の原因となるMRSA等を含む病原菌(※3)が、2時間以内で99.9%殺菌されることが証明されました。2008年には、米国環境保護庁(EPA)が、銅および銅合金が公衆衛生において殺菌力があるという表示をしてもよいという認可を、米国の銅開発協会(CDA)に対して出しました。EPAが公衆衛生に効果があると認めた固体は、この銅および銅合金が初めてのケースです。これを受けて、米国の医療施設では、ドアノブ、ベッドの手すり、点滴の支柱台、水道の蛇口などに、銅製品を導入する取り組みが加速しているようです。日本においても、社団法人日本銅センターと北里大学医学部および北里大学付属病院との協同研究により、同様の取り組みが進められるともに、具体的な事例も出てきました。NPO法人日本医療流通改善研究会では、事例を交えたセミナーなどを開催し、その普及を図っています。
抗菌素材としての銅製品の導入そのものもそうですが、古代より人類が培ってきた知恵を現代において活用した好例という意味でも、非常に興味深いと言えるのではないでしょうか。 (らぼたもち)
※1 Vol.1209(12月号)参照。
※2 この作用は、銅のほかにも、金、銀、プラチナなどの金属で認められるようです。
※3 他にも、レジオネラ菌、O-157、クリプトスポリジウムなどに対する効果が実証されています。
[2013年3月公開]
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