FM TOPICS
既設エレベーター閉じ込め対策の財政支援
マンション・駅・オフィス・商業施設など、私たちはエレベーターを日常的に利用しています。
日本は地震大国と呼ばれるほど地震が頻繁に起こる国であり、地震が起きた時にエレベーターに乗っているとカゴの中に閉じ込められる恐れがあります。
地震などの災害で街中のエレベーターが止まった場合、エレベーター保守会社は人が閉じ込められたエレベーター、病院や警察署のエレベーターなど緊急度、重要度が高い場所から優先して復旧作業を行います。特に広範囲で大規模な地震が起きるとエレベーターの閉じ込めも広範囲で急増し、出動できる専門技術者の人数にも限りがあるため、場所によってはエレベーターが止まってから復旧・救助までに相当の時間がかかることになります。さらに、閉じ込めの時間が長引くほど、トイレ問題、不安感によるストレス増加、高温多湿による脱水症状、空腹などによる体力消耗、持病の悪化など、人体におよぶ様々なリスクの発生確率が高まると言われています。
2011年3月に発生した東日本大震災では、全国20都道県で合計257件のエレベーターの閉じ込めが発生しており、東京都内では閉じ込め救出に最大9時間以上かかったケースなどが報告されています。また、2018年6月、早朝の通勤時間帯を襲った大阪北部地震では、近畿2府3県(滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県)で約6.6万台のエレベーターが運転を休止、346台で閉じ込めが発生し、救出時間は、通報を受けてから最大5時間20分、平均約1時間20分で、9割近くは約3時間以内に解消したものの、それを超える案件も多数確認されています。
なお、国土交通省の報告では、昨今懸念されている首都直下型地震が発生した場合、3万台以上のエレベーターが停止し、最大1.74万人が閉じ込められ、その救出時間は平均でも10時間程度かかると試算されています。
閉じ込めの防止対策として、建築基準法では新設のエレベーターに「地震時管制運転装置」の設置を義務づけています。地震時管制運転装置とは、緊急地震速報と同じ仕組みで、はじめに到着する小さな揺れ(=P波)をセンサーで感知すると、その後に到着する大きな揺れ(=S波)が来る前にエレベーターを最寄り階へ自動着床させて扉を開き、搭乗者の避難を誘導することができる装置です。ただし、地震時管制運転中にS波を感知すると、安全装置が作動してエレベーターが緊急停止(=閉じ込め)する可能性があります。
前述の大阪北部地震では、閉じ込めにあった346台のうち、139件は現行基準に適合した地震時管制運転装置(P波センサー・S波センサー・予備電源装置・かご内表示装置)が設置されており、他193件にも既存不適格ながら同装置(S 波地震感知器)が設置されていましたが、その多くが地震時管制運転中、エレベーターが最寄り階に着床する前に安全装置が作動しており、中には地震の揺れでドアロック装置にエラーが生じ、実際は開いていない扉を「開放」と検知したため、安全装置が誤作動を起こして閉じ込めとなったケースも確認されています。
このような状態になった場合、従来は専門技術者が現地に赴き、手動操作でエレベーターを最寄り階へ着床させていましたが、現行基準に適合したエレベーターには、地震時管制運転中にS波を感知して緊急停止した場合でも、その後、地震の揺れが収まって安全装置が正常に復帰すれば、自動的にエレベーターを最寄り階に着床させて閉じ込めを解消させることができる「リスタート運転」という機能が装備されています。この機能は、特にドアロック装置のエラーによる閉じ込めを一定程度防ぐ効果があると考えられています。
国土交通省が2020年に報告した『地震時管制運転装置の設置状況』では、全国にある約75万基のエレベーターのうち、概ね、3割のエレベーターに現行基準に適合した地震時管制運転装置を設置済、残り7割は既存不適格または未設置という内容でした。
この状況を鑑み、同省では「エレベーターの防災対策改修事業」と銘打って、地震時管制運転装置の設置、リスタート運転機能の追加など、既設エレベーターの防災対策に対する財政支援を行っています。この財政支援は災害時に緊急避難場所となる建物が対象となりますが、入居者の安全確保のためにエレベーターの防災対策を検討されてみてはいかがでしょうか。
(KOB)
【2022年2月公開】
出典:国土交通省(https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001448885.pdf)
お問い合わせはお気軽にどうぞ
企業施設、賃貸施設、マンション、公共施設、教育施設などの施設管理業務(主に、運営維持業務)の効率化、コスト削減をご検討の際には、マネジメント業務に特化したアウトソーサーである私たちへお気軽にご相談ください。御社のニーズにあわせたご提案や、成功事例をご紹介します。
施設管理ご担当者様の参考となる資料を豊富にご用意しております。
ご希望の方はこちらからお申し込みください。