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テナントビルの省エネに向けた取り組み
ウクライナ情勢などによる石炭や液化天然ガス(LNG)の輸入価格高騰の影響で、燃料費調整額の値上がりが続き、電気料金の高騰が続いています。一般家庭のみならず、企業、学校、老齢施設など全ての施設でこの影響は避けられない状況になっています。特に省エネに向けた取り組みが遅れていたテナントビルなどではこの影響が顕著です。ここでいうテナントビルとは、ビル所有者などがビルを企業に貸し出し、賃貸料収入を得る施設のことですが、なぜ省エネ対策が遅れているのでしょうか。
これには、ビル所有者とテナントの双方が、省エネに向けた取り組みが実行しにくいという根本的な理由が存在します。ビル所有者は、先に述べたように賃貸料を得ることを目的にビルを貸し出していますので、省エネ改修にコストをかけることを躊躇います。これは改修費用をビル所有者が負担したにもかかわらず、その恩恵はビルを利用しているテナントが受けるため、費用対効果が感じられないということがあります。一方でテナント側は、設備はビル所有者のものであるため、省エネ改修などを自ら行うことは非常に稀といえます。退去した際の原状回復の問題、ビル所有者への説明など、積極的に改修を行う動機となるものが少ないと言えます。
以前から国や地方自治体は「グリーンリース」という言葉で、助成金事業としてこの問題への解決を促進させようとしていました。グリーンリースとは、ビル所有者が省エネ改修などを行い、その結果テナントが受けた恩恵(主には電気使用量の削減)の一部をビル所有者に金銭として、還元させる仕組みのことを言います。具体的に言えば、室内の照明をLED化するための費用をビル所有者が負担し、テナントはLED化により削減された電気使用量つまり電気代の一部を、ビル所有者に賃料とともに支払うことで、双方にメリットが生まれ、さらには環境への負荷低減にもつながります。現在はグリーンリースに関する助成金事業の公募は終了していますが、ビル所有者とテナントの双方がWin Winになる仕組みとして今でも注目されています。
電気料金の高騰、助成金事業という側面から「グリーンリース」を見るのではなく、施設の維持保全の一部としてみるべきでしょう。そして、私たちは、施設をマネジメントしていくうえで、当事者全員がそのメリットを享受でき、そのうえで地球に優しいこの仕組みを積極的に提案し、活用していく必要があると考えます。(P.Sちか)
【2023年3月公開】
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