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木槽
木槽とは何かご存じでしょうか。初めてこの言葉を聞く方もいるかもしれません。木槽とは材料として木を用いた木製の水槽で、建築設備の貯水槽として使われています。貯水槽の材質で最もよく知られ、流通しているものはFRP(※1)およびステンレスです。国内において、木槽の存在があまり知られていないのは、数が少ないこともありますが、設置されている場所の多くが人目につかない場所であることも一つの要因かもしれません。
海外に目を向けてみると、アメリカでは1800年代の後半から、莫大な森林資源を活用した木槽が多く使われてきました。最先端都市であるニューヨークに林立している高層ビルの屋上の多くに、木槽が設置されています。ニューヨークの木槽は、10,000基近くあり、毎年400基程度の木槽が更新されているそうです。これは衛生、保全、強度、コストなどのトータルの観点から、市民権を得ているためです。また、ニューヨークの水槽職人が、より木槽の歴史が古く、今もなお広く普及しているヨーロッパの出身者が多かったことも、その要因かもしれません。
一方、国内での木槽の活用事例をみてみると、羽田空港の第一ターミナルビル、第二ターミナルビル、国際線ターミナルビルの各ターミナルビルに、容量170~388㎥の受水槽が4基ずつ、合計12基が設置されており、羽田空港ターミナルの飲料水はすべて木槽より供給されています。羽田空港で飲食をされた方は、知らないうちに木槽で受水された水を飲んでいることになります。
木は、第一に錆びない材質であり、耐水性能があり、弱酸・弱アルカリにも強い材質です。第二に、環境にやさしい素材で、環境問題LCCO2(二酸化炭素固定化)問題に対応する素材です。解体後は、リサイクルも可能です。第三に、優れた断熱性能を有しており、水の温度が保持できます。第四に、メンテナンスがしやすいことが挙げられます。水槽の底をフラットな形状にすることができるため、清掃がしやすくなります。また、補修も容易です。木槽は、このような優れた特徴を持っているのです。
しかしながら、国内においては、現在1,000基程度と、貯水槽としてのシェアはかなり低いのが現状です。しかし、地球環境保全の観点から、特にCO2排出削減を主とした地球温暖化の阻止は急務となっており、さらには、森林資源の保護の観点からも対策を打たなければならない状況下において、木槽を普及させていくことは、有用な手段かもしれません。(東奔西走)
※1 FRP:Fiber Reinforced Plastics、繊維強化プラスチック。ガラス繊維などの繊維をプラスチックの中に入れ強度を向上させた複合材料のこと。
[2014年08月公開]
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