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コンクリートの寿命

 

多くの建物にコンクリートが使用されています。もはや欠かせない材料のひとつと言ってもいいでしょう。では、このコンクリートの耐用年数はどの程度なのでしょうか。

 

一般に、鉄筋コンクリート造の建造物の寿命は、欧米では70年以上とも言われていますが、ここ日本では40年程度との意見もあります。ただしこれは、使用できない状態になったという構造的な理由による寿命というわけではなく、配管などを含めた設備の劣化や用途変更による機能的な理由、もしくは経済的な理由で取り壊されることが多いのではないかと考えられます。日本では、スクラップ アンド ビルドの傾向が強いのです。とはいえ、コンクリートが実用化されて約100 年程度であるため、実際にどのくらいの耐用年数があるのか実証はされていないのも事実です。

 

コンクリートは、当初アルカリ性ですが、空気中の二酸化炭素を吸収して年に厚さ0.5mmずつ中性化していくと言われています。RC(鉄筋コンクリート)造における一般的な鉄筋のかぶり厚(コンクリートの厚み)は3cm。つまり、60年でコンクリートの中性化が鉄筋にまで到達する計算になります。コンクリート自体は、中性化しても強度が下がる訳ではありません。中性化が進むことによって、鉄筋が錆びやすくなります。鉄筋が錆びることによって、鉄筋が膨張し、コンクリートを徐々に押し出すような現象が発生し、強度が下がってしまうのです。

 

では、この現象への対応方法はどういったものがあるのでしょうか。

 

劣化の激しい部位は、フレッシュコンクリートの注入などが必要となりますが、表面に建築物修復用のポリマーセメントモルタルを塗布することで、鉄筋は保護されるため、大幅に建築物寿命を延ばすことができるようになりました。また、中性化したコンクリートを電気化学的にアルカリ性に戻す、アルカリート工法という方法もあります。

 

今後、高経年化する建物が増加してきます。しかしながら、環境保全などの観点から、これまでのスクラップ アンド ビルドの発想から抜け出し、建物を社会資本と捉え、進化する技術を活用して長寿命化を図っていく転機なのではないでしょうか。(M・F)
[2014年09月公開]

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