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建物内の気圧の調整
新築の建物で空調設備は正常に動作しているのに、冬季に1階のスペースに、暖房器具を追加設置しているというミスマッチな事象を耳にすることがあります。この原因として考えられるのが、建物内の気圧です。建物全体が負圧であるため、1階出入口より寒気が流れ込み、出入口近辺の温度が上がらないのです。建物全体を正圧にすることによってこの事象を解消することができ、結果として、省エネルギーにつながります。
今回は、この建物内の気圧をコントロールする手法について考えてみます。
まず、「正圧」と「負圧」とは何でしょう。「正圧」とは、大気に比べて圧力が高い方、「負圧」とは、大気に比べて圧力が低い方をいいます。建物の場合、室内側へ入ってくる空気の量が出ていく空気量よりも多く、常に室内側から室外側へと空気が「押されている状態」が「正圧の状態」です。例えると、空になったジュース紙パックにストローで空気を入れていくと膨らみますが、その膨らんだ紙パックの状態が、正圧の建物の状態です。
それとは逆に、室外側へ出ていく空気の量が入ってくる空気量よりも多く、常に室外側から室内側へ「引っ張られている状態」が「負圧の状態」です。先ほどと同じ例えを使うと、空になったジュース紙パックにストローを入れて吸っていくと萎んできますが、その萎んだ紙パックの状態が負圧の建物の状態です。
エネルギー負荷の高い空調設備の省エネルギー効果を得るために、建物内を正圧にするためには、空調機の外気導入量を減らさずに、外気負荷を減らさなければなりません。通常は、OA(※1)量(外気導入量+外気侵入量)=EA(※2)量(機械排気量+自然排気量)ですが、負圧の建物はOA量<EA量となっています。負圧の建物は、外気導入量を少なくしても外気侵入量が増えるだけで、外気負荷は減りません。建物内の気圧を上げるには、OA量を増やすかEA量を減らせばよいのですが、そのためにはまず、無駄な排気が無いかを調べ、停止できる排気ファンを停止させ、OA量=EA量になるまでEA量を減らすことにより、外気負荷を減らすことができます。正圧の建物はOA量>EA量なので、逆にOA量=EA量になるまでOA量を減らすことにより、外気負荷を減らすことができます。建物全体でのOA量=EA量になるように調整を行うだけで外気負荷が減り、省エネルギーにつながります。さらには、フィルターを介さない侵入外気には粉塵も多いため、建物内の空気環境も良くなります。
また、意図的に自然排気したり、全熱交換機での気圧バランス調整によっても、建物内の気圧の調整をすることができます。さらには、電気室の暖かい空気を還気ダクトに送り、その熱を別の空調区画に送って利用するなどの工夫をしている事例もあります。
一度、建物内の気圧の状態を点検し、建物内の気圧の調整による省エネルギーを検討してみてはいかがでしょうか。(東奔西走)
※1 OA = outlet air:建物内に入ってくる空気
※2 EA = exhaust air:建物内から排出される空気
[2014年11月公開]
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