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屋上緑化の効果

近年の電力供給のひっ迫を受けて、太陽光発電など屋上を有効利用する手段に注目が集まっています。いうまでもなくこれは電気を作る「創エネ」ということになりますが、もうひとつ屋上の有効利用手段として、屋上緑化があります。この屋上緑化は、電力の消費を抑えるということで、「省エネ」の手段であると言えます。

 

屋上緑化とは、屋上の空いたスペースを利用し、軽量土壌などを敷設し、芝生やセダム(※1)などを栽培することで緑地面積を増やそうとするもので、景観上の癒しやなごみの空間としてのメリットはもちろん、断熱による高い省エネ効果が期待できます。

 

真夏の屋上温度を測定した研究では、緑化していない屋上の表面温度が60度にも上昇するのに対し、緑化した屋上の表面温度は30度程度までしか上がらないとの結果が出ています。この高い断熱効果により、施設の空調負荷が下がり、省エネにつながります。

 

環境問題を専門とするジャーナリストである船瀬俊介氏によると、「東京都23区のビル群の屋根の半分を緑化しただけで約100億円、壁面緑化も加わると約120億円の冷暖房費の節約になるとされている。仮に日本全国の都市、建築を緑化すると、夏でも、5度室温を下げることができる。これは、原子力発電所25基に相当する省エネである。」としています。

 

また、屋上緑化には、施設の延命効果も期待できます。多くの方が、屋上緑化により、施設が痛み劣化が進行しやすいと誤解しているかもしれません。しかし、緑に覆われることにより、紫外線による劣化を防ぐとともに、躯体の温度差を少なくすることにより熱膨張収縮を緩和し、亀裂の発生を減少させ、酸性雨の侵入を食い止めたりすることができるのです。

 

さらに、屋上緑化は、その施設の快適な屋上空間の創造、省エネ、延命効果などだけでなく、都市問題であるヒートアイランド現象の緩和という効果をももたらします。

 

このように大きな効果が期待できる屋上緑化を推進するために、自治体によっては、一定の面積以上の緑化をした場合に助成金を支給するところも出てきています。また、2004年には「都市緑地保全法」が改正され、建築の規模によっては一定割合の緑化を義務づける内容が盛り込まれました。

 

東日本大震災以降、電力供給不足を背景に、屋上の有効利用は、固定価格買取制度の対象である太陽光発電一辺倒になっていますが、多大な効果をもたらす屋上緑化が、環境負荷低減のためのソリューションのひとつとして大いに議論されてもいいのではないでしょうか。(P.Sちか)

 

※1 ベンケイソウ科に属する、乾燥、高温、低温、塩害、アルカリなどに強い多肉植物。
[2013年8月公開]

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