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エルゴノミクスと労働環境
「エルゴノミクス」という言葉をご存じでしょうか。エルゴノミクスは、「人間工学」とも訳され、「人間に適切な作業環境を求めて、人間と作業環境との関係を人間の特性から究明する学問である」などと定義されます。
その応用範囲は実に広く、工業製品のデザインから、ソフトウェアの設計、製造工場のライン設計などにも取り入れられています。そして多くの場合に、適切な労働環境を実現するために「エルゴノミクス」は不可欠であると言えます。
さて、一口に「労働環境」といっても多種多様です。そこで、一例として、VDT作業を取り上げてみましょう。
VDT作業とは、ディスプレイ、キーボード等(Visual Display Terminals)使用した作業のことで、一般的にはコンピューターを用いた作業を指します。情報通信技術の進展に伴い、一日の大半をVDT作業に費やす方も多いのではないでしょうか。しかし、この作業が、健康に深刻なダメージを与える可能性があるというしっかりとした知識を有している方は、少ないかもしれません。
長時間のVDT作業により、目や身体・心に影響が出てしまう病気の総称が、「VDT症候群」です。具体的な症状としては、手や手首、首、肩の痛みなど「上肢の障害」、ドライアイや眼精疲労など「目の障害」、そのほか、自律神経失調症など「精神の障害」、アトピー性皮膚炎の悪化など「皮膚の障害」、ホルモン分泌の異常など「内分泌系の障害」などもVDT作業によって引き起こされると考えられています。
これらを防止するには、長時間連続で作業を行わず、定期的に休憩をとってストレッチを行うなどの運用面での対策とともに、労働環境そのものの整備が有効な対策となります。
エルゴノミクスの視点で、このVDT作業環境を分析すると、①ディスプレイに対する照明、採光などの「光環境要因」、②机、椅子、キーボード、それらの配置などの「姿勢要因」、③作業場の温室度、空調、騒音などの「物理的環境要因」、④休憩時間の取り方、仕事の進め方などの「作業設計要因」、⑤健康状態などの「個人的要因」、などが配慮すべき項目となります。(※1)
実際、これらの環境を整備するには、投資が必要です。しかし、作業環境に起因するワーカーの体調不良による欠勤やそれに対する補償、生産性の低下などを鑑みると、環境整備に投資するという選択肢は、十分検討に値すると言えるでしょう。
ファシリティコストは、一般的に人件費に次ぐ大きなコストです。そのため、ファシリティコストを削減することに重点が置かれ過ぎるきらいがあります。しかし「適正なファシリティコスト」を考えるには、ファシリティの「利用者」を置き去りにしてはなりません。ファシリティコストの削減を図るときに、「利用者」である「ワーカー」に多大な犠牲を強いることのないような施策とすべきです。さらには、もう一歩踏み込んで、最適な労働環境を提供することにより、労働者の「生産性」を向上させるというアプローチは、まさに「人」を中心に置いたFMの視点と言えるでしょう。(らぼたもち)
※1 厚生労働省が2002年に「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を策定しています。
[2013年8月公開]
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