FM TOPICS
地方自治体におけるFMの取り組み
日本の人口は、2004年をピークに減少へと転じており、とりわけ地方圏においてその傾向は顕著となっています。人口減少や経済の低迷による税収の落ち込みが見られる一方で、高度経済成長期に建設された多くの公共施設が、老朽化し、耐震性の不安も抱えています。また、市町村合併や少子化による学校統廃合により、遊休・低利用化する施設も生じています。さらに、高度化・多様化する利用ニーズに施設が対応していかなければならない側面もあります。
このように、地方自治体が保有する施設に、課題が多くある中で、FMの導入によってこの状況を打開しようとする取り組みが見られるようになってきました。
一つの成功事例として、青森県における取り組みを取り上げてみましょう。
青森県では、2年間にわたる調査研究を経て、2003年に庁内ベンチャー制度で職員から提案のあったFMの導入が知事により採択されました。当初の2年間を「導入段階」と位置づけ、施設情報の整備や施設維持保全業務の適正化に着手しました。その後の2006年からを「推進段階」と位置づけ、策定した「県有施設利活用方針」によってFM方針の体系化とともにガバナンス強化を行い、2007年からは組織化を図っています。2008年以降は「加速・展開・体系化」の段階として、宅地建物取引業者への施設の売却業務の委託、「資産戦略」・「中期実施計画」の策定など、全庁一体となった取り組みのもと、段階的に着実に成果をあげています。上述の「県有施設利活用方針」では、FM方針として、①保有総量縮小、②効率的利用、③長寿命化の3つを掲げています。そして、施設の棚卸をするための「施設評価手法」を独自に開発し、その結果によって、各施設を、「維持」、「再生」、「転用」、「建替え」、「売却」等に分類したうえで、全庁的な利用調整とLCCシミュレーション(※1)による保有コストの検証を行います。その上で、財政負担を考慮した保有施設全体の「資産戦略」の策定と、それによる「中期実施計画」の策定を行い、これに基づいて個別の施設の活用方針を定めていく方策となっています。非常に体系立った、効果的な取り組みと言えるのではないでしょうか。
実際、この青森県の取り組みは、2008年にはJFMA(※2)の「第2回日本ファシリティマネジメント大賞」において「最優秀賞」を受賞するなど、非常に高い評価を得ています。また、三重県、香川県、東京都、北海道、京都府、千葉県佐倉市などでも、同様の取り組みが行われています。
冒頭で述べた、地方自治体が保有する施設をとりまく環境の改善に大きな期待ができない中、地方自治体におけるFMの導入は、むしろ不可欠なものになっていくのではないでしょうか。
そのことにより、FMの効果性がますます広く認知され、様々なセクターが保有する膨大な社会ストックであるファシリティの効率化が図られていって欲しいものです。(らぼたもち)
※1 LCC:ライフサイクルコストの略。製品や構造物などの企画、設計に始まり、竣工、運用を経て、修繕、耐用年数の経過により解体処分するまでを建物の生涯と定義して、その全期間に要する費用を意味する。
※2 JFMA:公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会の略称。日本におけるFMの普及定着を図り、ファシリティマネジャーの育成を推進する機関である。
[2013年10月公開]
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