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防火体制の整備

2013年10月11日未明、福岡市博多区の医院で発生した火災により、10人の尊い命が失われました。この火災においては、防火戸が閉まらなかったことにより被害が拡大したことは、報道でも大きく取り上げられました。同様の事例として、2001年に新宿歌舞伎町の雑居ビルで44人の死者を出した火災を思い出された方もいるのではないでしょうか。どうしてこのような悲劇が繰り返されてしまうのでしょうか。

 

今回の事例の問題点を整理してみましょう。防火戸とは、火災時に火炎や煙の広がりを防止するための扉で、開けても自然に閉まる「常閉」と呼ばれるものと、火災を感知すると閉鎖される「随閉」と呼ばれるものとがあります。(※1)「随閉」タイプの火災の検知方法としては、煙感知器によるものが主流となっていますが、同医院では、現行法では設置が認められていない「温度ヒューズ式」のものが使用されていました。(※2)同医院では3年ほど前に増築をしていましたが、この増築自体が無届であったという建築基準法違反も明らかになっています。本来であれば、この増築の時点で、防火戸を「煙感知式」に替えておく必要があったのです。また、4階の防火戸については、「常閉」タイプのものでしたが、取っ手と階段手すりがロープで結ばれ、常時開放されていました。これら防火戸の整備の不備により、被害が拡大する結果となりました。

 

さらに、今回問題点として注目を集めているのが、福岡市においては、同規模の診療所において防火戸の点検・報告義務が課されていなかった点です。防火戸については、消防設備と思われがちですが、その点検保守については、消防法ではなく建築基準法で定められており、さらにその点検報告の対象は、自治体の裁量に任されている点も、混乱を招いている要因となっています。すなわち、点検の委託者としては、消防設備一式の点検を依頼し、防火戸は適切に保守されていると理解していたが、点検者としては、法定点検の対象外であるために、防火戸の点検をしていない、という事が起こり得るということです。

 

この点においては、現行の法制度が、本当に施設の安全を守るものとなっているのかを見直し、早急に整備し直すことが望まれています。その一方で、施設の管理者の意識の向上も求められていくと考えられます。法令順守はもちろんのこと、「義務」ではなくても、スプリンクラーなどの消防設備を設置する、様々な状況を想定した自主的な避難訓練を実施するなど、の防火体制の整備が人命に直結する問題であることをしっかりと意識し、必要な行動を起こすことを、強く、社会から求められていくことでしょう。(らぼたもち)

 

※1 正式には、それぞれ、「常時閉鎖型防火戸」、「随時閉鎖型防火戸」と呼ばれます。
※2 このように、設置当時は法に適合していたものの、その後の法改正に適合しなくなる事例は「既存不適格」と呼ばれ、必ずしも是正の義務はありません。しかし、増改築等の大規模改修を実施する際には、是正が「義務」となります。今回のケースでは、増築前までは「既存不適格」、増築後では、「建築基準法違反」の状態であったことになります。
[2013年11月公開]

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