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「空き家」対策

近年、居住者がいない建物、いわゆる「空き家」が、全国で増加傾向にあることが問題となっています。住む人がいない建物はゴミの不法投棄、不法侵入や放火などの犯罪の温床となる危険性があります。

 

総務省が5年ごとに実施している「住宅・土地統計調査」によると、2008年の空き家の総数は757万戸にのぼり、1988年の約2倍にもなっています。さらに興味深いのは、地方だけではなく、都市部でも同様の傾向が見られるのです。

 

ではなぜ、「空き家」が増えたのでしょうか。その要因として、1)相続の際に登記の書き換えが行われず、所有者が特定出来ないため、自治体が指導できない 2)空き家を解体して更地にすると固定資産税が増えるため、所有者が放置する 3)建築基準法の要件を満たしておらず、建て替えができない 4)高額な撤去費用が出せない といったことが挙げられます。

 

2013年の調査結果はまだ出ていませんが、高齢化や人口減少傾向などから、「空き家」の数は今後も増加する傾向にあると見られており、国や自治体も対策に本腰を入れ始めています。

 

例えば、神奈川県横須賀市。横須賀市では、「空き家」を大学生に使ってもらおうという試みを始めました。横須賀市の汐入地区は、高度経済成長期に建てられた住宅が、小高い山が続く傾斜地に建てられた住宅密集地です。駅から近いにも関わらず、道が細く階段になっているため、車も通ることができず、道路を拡張することもできません。そのため、高齢者が転居し、「空き家」が増えていました。

 

そこで横須賀市は、大学生に着目しました。大学生に低家賃で「空き家」を貸し出す条件として、地域活動への参加を設定したのです。資源ゴミの回収などを通して、地元の高齢者と若い世代が交流を図り、地域の活性化に繋げる方策です。この汐入地区をモデルケースとして、今後は他の地域にも広げていくそうです。

 

このような従来とは違った「空き家」対策のほか、撤去費用の補助や撤去・修繕を命令・勧告できる条例の制定など、地方自治体も動き出しています。海外でも同様の問題が起きており、撤去費用の補助以外にも、都市計画の見直し(都市規模縮小政策)がなされたりしているようです。

 

今後ますます高齢化が進んでいくなかで、より一層「空き家」問題が顕著になってきます。建物の修繕や解体といったハード面からのアプローチの他に、横須賀市の事例のように運営、さらにはコミュニティづくりなどのソフト面からのアプローチも有効であることが実証されています。このように、「ハード」だけではなく「ソフト」にも着目するというFM(ファシリティマネジメント)の視点は、今後顕著になっていく「空き家」問題の対策においても十分に機能するのではないでしょうか。(M・F)
[2014年3月公開]

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