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リノリウム床のメンテナンス仕様

私たちがマネジメントしている施設内には、様々な種類の床材が使われており、それぞれの特性に合わせたメンテナンスが必要です。その中でも注意が必要な床材の一つに、リノリウムがあります。

 

リノリウムは自然素材の床仕上げ材のひとつで、亜麻仁油に樹脂、コルクくずなどを混ぜて麻布に圧着して作られます。弾力性があり、優れた歩行感と耐久性が期待され、また抗菌性もあります。他にも、焼却しても有害物質が排出されないといった特徴がある一方で、多孔質で水分を吸収しやすく、アルカリ性や溶剤に弱いという性質もあります。

 

通常のメンテナンスの仕様としては、施工後すぐにワックスを2~3層塗布して表面に保護被膜を形成し、その後、年に数回ほど機械洗浄をした上でワックスの上塗りを行います。ただし、これを繰り返していくと、徐々にワックス被膜が厚くなると共に、ワックス層の間に微量の汚れが残存し、さらに古いワックス自体が劣化することによって、徐々に美観が損なわれていきます。そのため、数年に1回、一旦すべてのワックスを剥がす「剥離」という作業することが一般的です。この剥離作業には通常、アルカリ性の剥離剤を使用しますが、ここで、リノリウムのアルカリに弱いという性質がネックとなります。もし、通常の剥離剤を使用すると、素材自体が変色してしまい、修復不能になってしまうのです。そこで、リノリウム専用の中性剥離剤を使用するのですが、アルカリ性剥離剤に比べると、剥離力に劣ることがあり、扱いの難しい素材となっています。

 

今回お話しする、都内のA社の本社ビルでも、社員食堂の床材にリノリウムが使用されているのですが、このような特性により、竣工後7年間剥離には手をつけられずにいました。そのため、積年の定期清掃によりワックス層は厚くなり美観も芳しくなく、また結果としてヒールマークが非常に付きやすい状態のため、その除去に毎日1時間ほど掛かっていました。

 

私たちは、この問題を解決すべく、いくつかの仕様をテストした結果、ある仕様が最もこの社員食堂の床材に適しているとの判断に至りました。

 

一般的な剥離剤は、ワックスを構成するポリマーの結合をバラバラにすることで剥離をしていますが、今回使用した剥離剤は、ポリマーそのものを分解するため、厚くなったワックス被膜でも効果的に剥離ができます。弱アルカリ性ではあるのですが、剥離後すぐに中和剤を塗布することで素材へのダメージを最小限に留めることができます。剥離後は、シーラーを塗布した後にワックスを塗布するのですが、表面が先に乾燥する従来のワックスに対し、今回使用したワックスは内部が先に乾燥するため、施工後に汚れが内部に入り込むのを防ぐことができ、表面に留まった汚れは次回の洗浄時に容易に除去することができます。さらに仕上げとしてバフ掛けにより光沢を出して初期施工は完了となります。

 

その後の定期清掃の仕様は、従来の「洗浄+ワックス」ではなく、「洗浄+バフ掛け」を基本としました。従来の洗浄方法は、ワックスをいわば削り取りながら洗浄するため、その後のワックス上塗りが必要となり、従来のように汚れとワックスが積層していくのに対し、今回使用したワックスは、ワックスを傷めずに表面の汚れのみを除去する洗剤を使用することにより、洗浄後は原則バフ掛けのみで光沢を復元することができます。歩行などでワックス層が薄くなった時のみ、ワックスをリコートする必要がでてきますが、長期間新たな剥離をせずにきれいな状態を維持できるという訳です。

 

この仕様を採用した結果、積年の汚れがリセットされたのはもちろん、日常的なヒールマークの付着も激減し、日常メンテナンスの労力を各段に減らすことができました。今後は、建物内の他箇所にも同手法を展開していく予定です。

 

私たちは、ファシリティマネジメントの専門家として、今後も様々な知見を取り入れながら最適なマネジメントの在り方を模索していきたいと考えています。(えくぼ)

【2020年6月公開】

 

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