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日鍛バルブ株式会社様における施設運営維持業務のアウトソーシング
【お客さま概要】
日鍛バルブ株式会社様(以下、日鍛バルブ様)は、1948年11月10日に設立され70年以上の歴史を誇る製造業です。古くは零式戦闘機のエンジンバルブを製造し、F1やNASCARなど世界的なモータースポーツにも関わっています。現在、国内に2つの生産拠点と3つの営業所、3つの関連会社、海外に13の生産拠点をもっています。
【事例概要】
国内の2つの工場の増改築プロジェクトにおけるマネジメント支援業務を経て、秦野地区の3つの工場(総延べ面積:約44,000㎡)の施設運営維持におけるマネジメント業務のアウトソーシングを導入することにより、「社員工数の削減」と「マネジメント業務品質の向上」を実現するとともに、それらのスパイラルアップを継続していています。
【方法論】
(1)増改築プロジェクトマネジメント支援: 2016年9月~2018年3月
(2)コンサルティング(現状調査、提案): 2018年4月~2018年8月
(3)アウトソーシング導入: 2019年4月~
(1)2016年当時、日鍛バルブ様は、神奈川県秦野市にある2つの工場において、工場施設の増改築プロジェクトを計画していました。当初は、本社屋の建設に携わったゼネコンへ打診をしたそうですが、プロジェクト規模、生産と並行しての施工という工事特性などにより、良い返事を得られずにいました。そこで、過去に接点があった私たちに声が掛かり、日鍛バルブ様とのパートナーシップが始まりました。
私たちの本業は、建物が竣工した後の設備管理業務、清掃衛生業務、セキュリティ業務などの施設運営維持業務におけるマネジメント業務ですので、このプロジェクトにおいては、私たちはマネジメントに特化した立場で支援するのがお客さまにとって望ましいのではと判断しました。つまり、設計・工事請負契約は日鍛バルブ様と建設会社、当社はマネジメント支援として別契約とするスキームです。
まず、私たちは、複数の取引実績のある建設会社と面談・折衝を行い、対応力などを精査した結果、ある建設会社をパートナーとして選定しました。建設会社の役割は、マスタープラン策定、コスト試算、法令順守確認、設計・施工であり、私たちの役割は、お客さまの視点で各種折衝やスケジュール管理も含めたマネジメント支援です。プロジェクトは約1年半にわたりましたが、月1回の会議体(3社による定例会議、2社(当社、建設会社)による確認会議)の運営も私たちが行い、無事にプロジェクトを完工させることができました。
プロジェクトを通して私たちが日鍛バルブ様に対して感じていたことは、意思決定にかなりの時間を要するということでした。その原因に社員工数過多という問題がありました。社内意思決定に必要なデータや根拠の収集に十分な工数をかけ切れず、スピーディーな意思決定を困難にしていた訳です。そして、その状況は、「施設運営維持業務」においても同様でした。そこで、プロジェクト完工後、私たちは、「施設運営維持業務のアウトソーシング(施設運営維持業務におけるマネジメント業務を含めて外部の専門家である私たちに委託する)」を提案しました。
(2)2018年4月から開始したコンサルティング業務における日鍛バルブ様総務部へのヒアリングで、改めて、次の2つの課題が浮かび上がってきました。「社員工数の削減」と、「マネジメント業務品質の向上」です。当時、約60,000㎡(秦野エリアの工場の一つ)の敷地内の施設運営維持業務におけるマネジメント業務を社内リソースのみで行っており、工数不足と専門ノウハウ不足により、総務部管轄の施策が効果的にドライブされていませんでした。
そこで私たちは、まず、現状を具体的に把握することが必要と判断し、3つの調査からなる現状調査を提案し、実施しました。3つの調査とは、①「施設調査」、②「施設運営維持コスト調査」、③「業務実施状況調査」です。これらの作業は、膨大な時間と労力を要するものでしたが、導入のためには不可欠なものでした。②においては、施設運営維持コストの原始伝票や元帳などの書類から、すべてのコストデータを収集しました(「外注費」の把握)。③においては、②の結果と現行の契約書や業務仕様書などとの整合性を確認するという作業を行いました。また、実際に業務の実施状況とマネジメント状況を視察し、業務品質のチェックや課題の抽出も行いました(「業務仕様」、「マネジメント」の把握)。
これらの調査により、現状の施設運営維持業務の全体像、および、施設運営維持業務におけるマネジメント業務の実施状況を、俯瞰的に分析するためのデータが収集できました。そして、この調査データを基に、適正コストと適正仕様を精査していきました。また、パートナー構成の再構築はもとより、業務品質保持のための「仕組みづくり」にも言及しました。その結果、品質維持を担保しながら、約9%のコスト削減が見込めるとの試算結果を出すことができました。具体的なアウトソーシングの導入に際しては、優先順位をつけて、フェイズ毎に、アウトソーシングの範囲を定めて進めていきました。初期段階のフェイズにおいては、アウトソーシング対象業務を、常駐警備業務、緑地整備業務、環境衛生管理業務、防災設備管理業務などに限定しました。
これは、日鍛バルブ様の抱える課題解決の効果が最も見えやすい業務であるという点と、一度に全業務をシフトしてしまうことによる日鍛バルブ様の負担軽減を考慮してのことです。その後、一定期間を経て、検証作業を行い、段階的にアウトソーシングの範囲を拡大していくという導入スケジュールとしました。このように、膨大な作業を伴ったコンサルティングと慎重な準備期間を経て、ようやく、2019年4月より日鍛バルブ様における施設運営維持業務のアウトソーシング導入がスタートしました。
(3)しかし、アウトソーシング導入のメリットは、決して導入時の「適正コストの実現」に限られたものではありません。むしろ、2つの課題、つまり、「社員工数の削減」と、「マネジメント業務品質の向上」をマネジメントサイクルによってスパイラルアップさせていくことこそが、一番のメリットでした。そのために、私たちは、いくつかの「仕組み」を構築しました。
まずは、「社員工数の削減」です。私たちのマネジメントスタッフを現地に常駐させ、社員が行っていた日常業務のマネジメントの一部を代行するスタイルを取りました。これには、守衛警備員などの実業務スタッフとの情報共有、点検などの立ち会いも含めた業務実施管理、各種問い合わせへの現場確認などが該当します。これにより、日鍛バルブ様ご担当者は、自らの工数を削減しつつ、情報のやりとりを私たちへ一本化させることができるわけです。
そして、「マネジメント業務品質の向上」です。私たちのマネジメントスタッフは、日常業務のマネジメントを一部代行することにより、現場の生情報を有しています。その生情報に、私たちが積み上げてきたマネジメントノウハウを掛け合わせるわけです。具体的には、①「個々の実業務パートナーとの日常打合せ」を都度行い、期限を切って課題解決を進めていきます。②「日鍛バルブ様の各ご担当者との個別打合せ」を都度行い、リアルタイムの要望の吸い上げと実業務パートナーとの課題解決進捗状況の共有を行います。③「定例会議」を月1回開催し、全体報告と意思決定を行います。これらをマネジメントサイクルでスパイラルアップさせていくことにより、「マネジメント業務品質の向上」を継続させていくことができるのです。
さらに、経営上の意思決定に役立てていただくために、不定期に、「お客さま上層部への報告会」も行います。私たちの提供サービスは「ファシリティマネジメント」という考え方を基に成り立っています。この考え方では、「施設(ファシリティ)」は、事業の経営基盤である4つの機能分野(人事、ICT、財務、施設(ファシリティ))の一つとして捉えられており、経営に大きく寄与しています。そのため、外部の専門家の立場から、改めて、保有施設における状況報告や問題提起をさせていただくべきだと考えるからです。
「施設運営維持業務のアウトソーシング」の範囲は、2019年4月の導入後、順調に拡大しています。設備管理業務、清掃衛生業務、セキュリティ業務に加え、福利厚生の向上に向けた「構内トイレの増改築」、「更衣室・休憩室の整備」などの改修修繕工事も対象になってきています。今後は、他拠点でのサービス提供を視野に入れ、マネジメント手法の一つとしてICTツールの有効活用も含め、アウトソーサーとして、日鍛バルブ様の元来のニーズであった「社員工数の削減」と「マネジメント業務品質の向上」のさらなる実現に向けて尽力していく予定です。(大の字)
【2021年6月公開】
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