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株式会社トープラ様における維持保全業務のアウトソーシング

 

【お客さま概要】
株式会社トープラ様(以下、トープラ様)は、国内に3つの工場と6つの営業所、2つの関連会社、海外にアメリカをはじめ4つの関連工場をもつ、1950年3月4日に設立され60年以上の歴史を誇る製造業です。いち早く頭部に十字穴(プラス)を取り入れ、日本で最初のJIS認定工場となったことで有名です。

 

 

【事例概要】
事業所A(本社、工場、研究センター、物流センター)における維持保全業務をアウトソーシングすることにより、約11%の維持保全コストの削減を達成したうえで、業務品質のスパイラルアップを継続している。

 

 

【方法論】
(1)コンサルティング(現状調査および提案): 2011年3月〜2011年5月
(2)アウトソーシング導入: 2011年8月〜

株式会社トープラ様(以下、トープラ様)は、神奈川県秦野市にある本社工場において、自社の「施設管理業務のマネジメント」の一部を総務部で担当、その他の部分を子会社に委託していました。しかし、トープラ様総務部と子会社との業務の線引きがあいまいな部分がある、トープラ様・子会社どちらにとっても「ノンコア業務」である「施設管理業務」に人的リソースを割くことができていない、結果として「費用最少・効果最大」を得る効率的な管理に至っていない、という課題がありました。つまり、社内リソースだけで行っていた「施設管理業務のマネジメント」の現状に大きな改善の必要を感じていた訳です。そこで、この子会社の解散を機に、「施設管理業務のマネジメント」を外部の専門家に委託することによって効率化を図ろうとの意思決定がなされ、当社に声が掛かりました。そこから、トープラ様と当社とのパートナーシップが始まりました。

 

2011年3月から開始したコンサルティング業務におけるインタビューによって、「ファシリティコストの削減」と、「業務品質の向上」という2点が、優先順位の高い課題であることが明らかになってきました。

 

そこで私たちは、まず、現状のコストおよび業務仕様を具体的に把握することが必要と判断し、4つの調査からなる現状調査を提案し、実施しました。4つの調査とは、①「施設調査」、②「維持保全コスト調査」、③「業務実施状況調査」、④「維持保全マネジメントコスト調査」です。これらの作業は、膨大な時間と労力を要するものでしたが、アウトソーシング導入のためには不可欠なものでした。②においては、維持保全コストの原始伝票や元帳などの書類から、すべてのコストデータを収集しました。(「見えるコスト」の把握)、③においては、②の結果と現行の契約書や業務仕様書などとの整合性を確認するという作業を行いました。また、実際に業務の実施状況を視察し、業務品質のチェックや課題の抽出も行いました。(「業務仕様」の把握)④においては、インタビューならびにアンケート調査により、施設管理担当者様が、現在、維持保全管理業務に費やしている工数を把握しました。(「見えないコスト」の把握)

 

これらの調査により、現状の維持保全業務の全体像を、俯瞰的に分析するためのデータが収集できました。そして、この調査データを基に、適正なコストと業務仕様を検討していきました。もちろん、コスト削減によって品質が下がるのでは意味がありません。パートナーの選定基準の設定はもとより、業務品質保持のためのしくみづくりにも言及しました。その結果、品質維持を担保しながら、約11%のコスト削減が見込めるとの試算結果を出すことができました。具体的なアウトソーシングの導入に際しては、優先順位をつけて、フェイズ毎に、「マネジメント業務を含めたアウトソーシング」の範囲を定めて進めていきました。初期段階の「フェイズ1」においては、アウトソーシング対象業務を、清掃業務・緑地整備業務・防災設備管理業務・環境備品整備業務に限定しました。

 

これは、トープラ様の抱える課題解決の効果が最も見えやすい業務である、という点と、一度に全業務をシフトしてしまうことによるトープラ様の負担軽減を考慮してのことです。その後、一定期間を経て、検証作業を行い、段階的にアウトソーシングの範囲を拡大していくという導入スケジュールとしました。このように、膨大な作業を伴ったコンサルティングと慎重な準備期間を経て、ようやく、トープラ様における施設の維持保全業務のアウトソーシング導入がスタートしました。

 

しかし、アウトソーシング導入のメリットは、決して導入時の「コストの削減」に限られたものではありません。むしろ、マネジメントサイクルによって、業務品質のスパイラルアップを図っていくことこそが、一番のメリットと言えます。そのためには、いくつかの「しくみ」が必要です。

 

トープラ様のケースにおいても、業務がスタートし、ただちにすべてが順調に動き出したわけではありません。業務内容に関して、トープラ様の期待値との細かな差異が生じることもありました。

 

そのような事態への対応の「しくみ」の一つが、毎月開催された「定例会議」です。この定例会議では、お互いに課題点を抽出しあい、改善を図っていくという作業が1ヶ月周期で行われました。短期的なマネジメントサイクルによる改善ということができます。

 

一方で、中長期的な視点での改善のためには、別の「しくみ」である「提案レポート」が活用されました。この「提案レポート」により、単年度の維持保全計画を立案すると同時に、必要と思われる改修・修繕計画も中長期的な視野で提案され、トープラ様の年度予算編成のための基礎資料となります。そして、トープラ様により最終的に意志決定された単年度計画を元に、「業務仕様書」が作成されます。これらの作業を毎月、毎年と積み重ねていくことにより、中長期的な視点での改善が実現されます。

 

「マネジメント業務を含めたアウトソーシング」の範囲の拡大についても、「フェイズ1」の導入後、順調に進捗していきました。「フェイズ2」においては、新しい本社ビルの完成時期に合わせ、警備業務を対象業務に加えました。そして現在、「フェイズ3」として、トープラ様の内部リソースで実施していた業務、例えば、ユニフォーム管理、災害備蓄品管理、などのオフィスサービス業務を、新たに対象にしました。このように、無理のないスケジュールと段階を経て、トープラ様の元来のニーズであった、(1)施設管理においては「費用最少・効果最大」を得る効率的な管理を実現しつつ、(2) トープラ様自身は、人的リソースを本来のコア業務に存分に充てることができる状態が、実現しつつあります。
[2015年5月公開]

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